「メーカー」企業の「文系」の仕事とは?|日新電機株式会社

大学の学部選択、就職…。必ずついて回る「文系」「理系」。理系のイメージの強いメーカーでの、事務系社員の仕事とは?コンデンサや変圧器などの電力機器を開発・製造する日新電機株式会社。その営業に当たる濱口悠一郎さんに話を聞いた。
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日新電機株式会社
電力システム事業本部 電力営業部
2012年 法学部卒
濱口 悠一郎氏

聞き手:京都大学TIMES編集部

1.理系から法学、そして大震災の中での就活へ

―就職までの経緯を教えて頂けますか?

中学・高校は中高一貫の学校に通っていました。
最初は文系でなくて理系だったのですが、
「就職の時のことを考えると、理系よりも文系の学部の方が選択肢が多いのではないか?」
と考え、高2の時に文系に変更して、京都大学の法学部に入りました。

そうした経緯があったので入学してからも、法曹よりは企業への就職を目指していました。
なので、法律の勉強もしてはいましたが、専攻は興味のある政治系の科目が中心でした。

就職活動では、最初はインフラ系の企業に興味を持っていました。
日本のインフラは非常に技術的なレベルが高く、
海外に技術を提供する中で継続して成長する余地のあるインフラ系の会社に入るのが良い、
と考えていました。
ただ当時、色々あって、結局4回生の時に一回留年して、他の人より遅れてのスタートになりました。

―京大生ではよくあることですね。

そうですね(笑)。
それでも、通信系の会社に内定を頂くことができ、入社するつもりでいました。
しかし、翌年の3月に色々な事情で単位を落としてしまって、その年は卒業できませんでした。

なので、そこからもう一度、5回生から就職活動をしました。
その時点でかなり出遅れていて、前年に志望していた
インフラ系の会社の選考期間は、既に終了していました。

その上、5回生の春というのが、ちょうど東日本大震災が起こった年でした。
それで企業の選考スケジュールも、めちゃくちゃになってしまっていて…。

なので、ちょっと視点を変えて活動を再開することにしました。

―視点を変えた、というのは、どういうことですか?

1つは、業界です。
「直接、インフラを運営する会社でなくても、
インフラ系の会社に製品を提供している会社も面白いのでは?」と考えました。

そこで候補に挙がったのが、重電業界でした。

日本の重電メーカーは7社あります。
その中で大手3社の下を、さらに深く掘り下げて行くと、
重電機器だけを専門に扱うメーカーが出てきます。
その中に日新電機がありました。

もう1つは、東日本大震災後の電力事情です。
深刻な電力不足の中で、対策に貢献できる企業に興味がわきました。

当時「首都圏での電力不足を解消するために、周波数の変換所を増強して、
国策として西日本から東日本へ電力を融通する量を増やさないといけない!」
という話が持ち上がっていました。

その周波数の変換に必要な機器を作っていたのが、
実は日新電機だったのです。
「この会社には将来性がある」と感じ、志望度が高まりました。

結果的に、一番早く内定を頂いたのも日新電機だったので、ここに決めました。

2.理系の仕事?文系の仕事?事業内容を聞きました。

―事業の話が出ましたが、具体的には、どのような内容なのですか?

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事業概要は大きく分けて4つです。

一つ目が、戦後復興時の電力ニーズに応えて日新電機が飛躍した原動力である、
コンデンサや変圧器といった電力機器事業です。

発電所でできた電力は、送電中のロスを減らすために非常に電圧が高い状態で送り出されます。
発電所→変電所→家庭や工場と、実際に電力が使われる場所に送電するまでの間に、
適切な電圧まで下げる必要があります。

変電所や大きな電力を使う施設で電圧を調整したり、
電力を安全に受け取ったりするために必要となるのが、
変圧器、ガス絶縁開閉装置、リアクトル、コンデンサです。

変電所はかなり数が多く、例えば関西電力管内だけでも1500か所以上あります。

電力を安全に受け取るために、家庭であればブレーカー盤が設置されますが、
工場やビルは大量の電力を受け取らなければならないので、一般家庭用の設備では間に合いません。

そうした場面で当社の機器が活躍しています。

 

二つ目が、新エネルギー・環境事業です。
太陽光で発電した電気の活用に欠かせないパワーコンディショナーが主力製品の1つです。
太陽電池で発電した直流の電気を交流に変換し、工場や一般家庭で扱えるようにする装置です。
当社では、インバータの技術を活かして1984年にパワーコンディショナーを開発し、
50kW用の装置を実証実験用に納入して事業をスタートさせました。
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太陽光発電システムは発電コストが高いため、当初はなかなか普及しませんでしたが、
環境への関心の高まりと国策でのFIT制度(再生可能エネルギー固定価格買取制度)の2012年の整備により、
急速に需要が伸びています。

三つ目は、ビーム・真空応用事業です。
半導体や薄型ディスプレイの製造に用いられるイオン注入装置や、
タイヤや電線などの品質向上に欠かせない電子線照射装置、
工具や自動車部品の性能を向上させる薄膜コーティング装置の製造や受託サービスを行っています。

この中で薄型ディスプレイ製造用の機器は、市場の伸びも大きいですが、
需要の上下も激しく、売上が景気に大きく左右される面があります。

スマートフォンやタブレット端末メーカーが多い中国・東南アジアでの需要が伸びており、
この分野は特に海外企業とのつながりも深いです。

四つ目は、ライフサイクルエンジニアリング事業です。

私たちが納入しているのは、電力を支える重要な設備であるため、
製品のライフサイクル全体に責任を持って関わっています。
お客様の設備全体を調整してお引渡しをして終わりではなく、
定期的にメンテナンスを行い、安心して寿命まで使って頂き、
更新の時期を迎えれば、最適な製品を提案するというものです。

一般的に電力機器というのは寿命が非常に長く、40年以上持つものもあります。

そのためには定期点検が必要です。部品の劣化や使用状況を見ながら、
使えるものはメンテナンスし、状態が悪いものは更新する、
という事で良好な状態を維持するサービスを提供しています。

3.メーカーの営業職とは?

―「メーカー」というと、技術系のイメージですが、
事務系・営業の方はどんなお仕事をされているのですか?

ものづくりが中心なので、技術系が多数派ですが、
事務系もおよそ3割います。事務系で多いのはやはり営業職です。

営業は顧客と社内の調整役、技術者は設計や製造などのものづくりそのものを行うという役割分担ですね。

営業は比較的、スケジュールを自分で決められます。
社内的な要素にあまり左右されず、一人でどんどん行くイメージですね。

商談をし、帰ってきてその情報を社内に流す。
そして社内でお客様と調整が必要な内容が出てくれば、
窓口として対外的な交渉を行うといった感じですね。

一般的に営業というと「注文を取れば終わり」といったイメージがあります。

しかし当社の場合は、注文を受けてからも、営業のやることはかなり多く、
むしろ注文を受けてからの方が忙しいくらいです。

私が扱っている電力機器も、受注してから設置、
その後の竣工検査まで完了しなければ、売上に計上されません。

そういう意味で最後まで気が抜けない仕事でもあります。

―営業のお仕事で、大切だと思われるのはどんな事ですか?

重視しているのは、やはりお客様とのやり取りの中で
「間違った情報を社内に持って帰らない」ということです。

非常に基本的なことですが、一番難しいです。
あいまいな部分を残したり、細部が間違っていると、
案件全体が間違った方向に進んでしまいます。

なので、お客様の意向とそれに沿った仕様や納期を正確に社内に伝える必要があります。
疑問に思った点やはっきりしていない点はお客様にきちんと確認を取ったうえで、
社内に情報を流さなければなりません。

単に情報をそのまま流すだけではないのです。
そういった意味でも、お客様から必要な情報を聴きとる力や
言葉の意図を正しく理解する力が必要ですね。

4.聞きにくいことを聞いてみました!

―職場の環境について、伺っても良いですか?

入社前は不安もありましたが、入ってみると、
社員に優しく、働きやすい印象を受けましたね。

必要以上に追い込まれることもありませんので、
いわゆるホワイト企業であると感じています。
その会社にしか作れないものがあるという強みは、
職場環境にも良い影響を与えていると思います。

―やはり、専門知識は必要なのでしょうか?

専門知識は確かに必要ですが、必ずしも入社の時点で求められるわけではなく、
選考の際に専門知識がないことが不利に働くというわけではありません。
一般的には、仕事の中で技術や知識を身につけていくというイメージです。

ただ、技術系に関しては、研究内容などが直接仕事に結びつくこともあるので、
ある程度は専門知識が必要な場合もあるかもしれません。

事務系に関しては、あればよい資格もありますが、必須ではありません。
いわゆる大学での「下準備」は必要ないケースがほとんどです。

しかし、勉強でもサークル活動でも、主体的に取組んだことや、
様々な人と協力して活動した経験は会社で活きてくると思います。

5.メーカーだからこその、苦労とやりがい

―苦労や、やりがいは、どんなことがありますか?

電力機器というのはインフラを支えるものなので、規模も大きく、
据付・調整などの工事期間も場合によっては、
1~2年と非常に長いので、途中でトラブルに見舞われることもあります。

大変なのはやはり、予想外の出来事が起こった時の調整です。
場合によっては、一からスケジュールを組みなおす必要もあります。
その際、お客様と交渉するのも営業の仕事なので、
会社の中と外との調整が一番大変ですね。

そういったことに一つずつ対処して行って、最終的に工事が完了し、
完成状態の製品を見ると「やってよかった」と思います。

6.メッセージ

―最後に、学生に向けてメッセージをお願いします。

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就職活動全般に言えることですが、私の時と比べ、現在はかなり状況が変わっています。

今は学生側の売り手市場になっており、人気が高い企業でも採用数が増えているので、
そういったところに目が向いてしまうかもしれません。

しかし、知名度が低い目立たない企業の中にも良い企業は、色々あるはずなので、
そういった企業にも目を向けてほしいですね。

それと、実際に働きだすとなると、働きやすさという観点も重要だと思います。

就職活動の際に休日や残業について聞くのは、選考に不利になるのではないかと考えがちですが、
確認せずに入社後に後悔するくらいなら思い切って聞いた方がよいと思います。
そういったことも、総合的に考えて就職活動を進めてほしいですね。

日新電機株式会社

創立1917年。 本社は京都市右京区に位置する。
電力エネルギー関連の設備を中心に
豊かな社会・産業基盤を支える製品・サービスを提供する、
アジアを中心に国内外に多数の拠点を持つグローバル企業。

電力会社向けの電力用コンデンサの国内シェアは 100%近くを占めており、
フラットパネルディスプレイ(FPD)製造用イオン注入装置
(スマートフォンのディスプレイの製造に不可欠) では世界トップシェアを誇る。
ホームページ:http://nissin.jp/

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